【2026年最新】内部不正を防ぐ振る舞い検知:ゼロトラストでの情報漏洩対策

企業のDXが進み、クラウド利用が当たり前となった現代において、従来の「境界型セキュリティ」は限界を迎えています。特に深刻なのが、正当な権限を持つユーザーによる内部不正や、盗まれたアカウントによる「なりすまし」です。これらは従来のログ監視やルールベースの検知では、正常な業務操作と区別がつきません。本記事では、支援現場での実体験に基づき、ユーザーの「普段とは違う動き」をAIがリアルタイムに捕捉する「振る舞い検知(UEBA)」の重要性と、ゼロトラスト環境における具体的な対策について解説します。

A high-end Japanese corporate office interior at night with a focused atmosphere. In the foreground, a sleek wooden desk holds a modern laptop displaying a complex security dashboard with various line charts and risk score indicators. The background shows large windows overlooking the Tokyo city skyline with blurred urban lights. The lighting is cool and professional, emphasizing a high-tech security surveillance environment.

1. 人力監視の限界と「Low and Slow」攻撃の脅威

実際のご支援現場でよくあるのは、「ログは大量に取得しているが、何が異常か判断できない」という悩みです。従来のセキュリティ対策は、「特定のIPアドレスからのアクセスを拒否する」「深夜のログインを禁止する」といった固定的なルールに基づいています。しかし、悪意を持った内部関係者や、認証情報を窃取した攻撃者は、業務時間内に、正規のツールを使って、少しずつデータを持ち出します。

これが「Low and Slow(低速かつ静かな)」攻撃です。一見すると通常の業務フローに紛れ込んでいるため、人力での監視や従来のSIEM(セキュリティ情報イベント管理)では検知が極めて困難です。以下のグラフは、近年の情報漏洩事案における「内部要因」の割合を示したものです。

図:情報漏洩原因における内部要因の割合(現場推計値)

支援現場では、特に自社EC構築・成長支援を行っている企業において、顧客名簿や売上データといった機密情報の取り扱いが課題となります。管理画面へのアクセス権限を持つスタッフの「振る舞い」をいかに可視化するかが、ブランドの信頼を守る鍵となります。

2. 振る舞い検知AIが「内部不正」を見抜く仕組み

振る舞い検知AI(UEBA: User and Entity Behavior Analytics)は、過去のログからユーザーごとの「標準的な行動パターン」を学習します。いつものログイン時間、よく使うデバイス、アクセスするファイルの傾向などをプロファイリングし、そこから逸脱した動きを「スコアリング」します。

A professional Japanese data analyst sitting in a bright, minimalist office. He is looking at two large monitors displaying data flow visualizations and user activity heatmaps. The screens show professional analytics software with various blue and orange data points. The setting is clean and organized, reflecting a high-security monitoring center environment.

例えば、普段は経理システムしか触らない社員が、突然エンジニア向けの共有サーバーにアクセスし、大量のファイルをダウンロードし始めた場合、AIは即座にアラートを上げます。たとえIDとパスワードが正しくても、「その人らしくない動き」を検知できるのが最大の特徴です。現場でよくあるのは、退職間際の社員による顧客情報の持ち出しですが、こうした動きも、アクセス頻度の急増や普段使わないUSBデバイスの接続検知によって未然に防ぐことが可能です。

3. ゼロトラスト環境におけるセキュリティ実装の勘所

「誰も信頼しない(Never Trust, Always Verify)」というゼロトラストの原則において、振る舞い検知は不可欠なコンポーネントです。単に導入するだけでなく、「アイデンティティ(誰が)」「デバイス(何で)」「コンテキスト(どのような状況で)」の3点を統合的に評価する仕組みを構築する必要があります。

A close-up shot of a smartphone screen being held by a professional in a business suit. The screen shows a biometric authentication interface with a fingerprint icon and a security verification message. In the background, a blurred modern office hallway with glass walls is visible, suggesting a secure corporate environment.

実際のご支援では、過検知(誤報)を減らすためのチューニングも重要です。業務プロセスを無視した厳しすぎる制限は、現場の生産性を著しく低下させます。例えば、自社EC構築・成長支援の現場では、セール期間中にアクセスが急増するのは「正常」な動きです。こうしたビジネスの季節性や特異性をAIの学習データに反映させることで、真にリスクの高い行動だけを抽出する運用が可能になります。

よくある質問

Q. 振る舞い検知AIの導入には、どれくらいの学習期間が必要ですか?
A. 一般的には2週間から1ヶ月程度のデータ蓄積が必要です。この期間にユーザーの標準的な行動パターンをAIが学習し、ベースライン(定常状態)を構築します。その後の運用を通じて、検知精度はさらに向上していきます。
Q. 既存のウイルス対策ソフト(EPP/EDR)とは何が違うのでしょうか?
A. ウイルス対策ソフトは主に「悪意あるプログラム(マルウェア)」を止めるものですが、振る舞い検知(UEBA)は「正当な権限を持つユーザーの異常な動き」を見抜くものです。外部攻撃の最終段階だけでなく、内部不正やアカウント乗っ取り対策に特化しています。
Q. 小規模な組織でも導入するメリットはありますか?
A. はい。少人数の組織ほど一人ひとりのアクセス権限が大きくなりがちで、内部不正が発生した際の影響が致命的になるリスクがあります。クラウド型の振る舞い検知サービスであれば、専任のセキュリティ担当者がいなくても、AIによる自動監視機能を活用してリスクを低減できます。

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まとめ

クラウド時代のセキュリティにおいて、もはや「内側だから安全」という境界型の考え方は通用しません。人力による監視の限界を認め、AIによる振る舞い検知を導入することで、Low and Slow攻撃や内部不正といった「静かなる脅威」を可視化することが可能になります。ゼロトラスト環境の構築は一歩ずつですが、まずはユーザー行動のプロファイリングから始めることが、強固な防衛線を築く第一歩となります。

公開日: 2026年8月28日 / 著者: 安田 修

この記事の執筆者
安田 修

安田 修

専務取締役 COO

Meets Consulting株式会社

EC運営・物流最適化を100社以上支援/オペレーション改善とコスト最適化が専門

参考文献

  • [1] NIST SP 800-207 "Zero Trust Architecture"
  • [2] Gartner "Market Guide for User and Entity Behavior Analytics"
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、専門的なアドバイスを代替するものではありません。特定の成果を保証するものではありません。