【2026年最新】内部不正を防ぐ振る舞い検知:ゼロトラストでの情報漏洩対策
企業のDXが進み、クラウド利用が当たり前となった現代において、従来の「境界型セキュリティ」は限界を迎えています。特に深刻なのが、正当な権限を持つユーザーによる内部不正や、盗まれたアカウントによる「なりすまし」です。これらは従来のログ監視やルールベースの検知では、正常な業務操作と区別がつきません。本記事では、支援現場での実体験に基づき、ユーザーの「普段とは違う動き」をAIがリアルタイムに捕捉する「振る舞い検知(UEBA)」の重要性と、ゼロトラスト環境における具体的な対策について解説します。
1. 人力監視の限界と「Low and Slow」攻撃の脅威
実際のご支援現場でよくあるのは、「ログは大量に取得しているが、何が異常か判断できない」という悩みです。従来のセキュリティ対策は、「特定のIPアドレスからのアクセスを拒否する」「深夜のログインを禁止する」といった固定的なルールに基づいています。しかし、悪意を持った内部関係者や、認証情報を窃取した攻撃者は、業務時間内に、正規のツールを使って、少しずつデータを持ち出します。
これが「Low and Slow(低速かつ静かな)」攻撃です。一見すると通常の業務フローに紛れ込んでいるため、人力での監視や従来のSIEM(セキュリティ情報イベント管理)では検知が極めて困難です。以下のグラフは、近年の情報漏洩事案における「内部要因」の割合を示したものです。
支援現場では、特に自社EC構築・成長支援を行っている企業において、顧客名簿や売上データといった機密情報の取り扱いが課題となります。管理画面へのアクセス権限を持つスタッフの「振る舞い」をいかに可視化するかが、ブランドの信頼を守る鍵となります。
2. 振る舞い検知AIが「内部不正」を見抜く仕組み
振る舞い検知AI(UEBA: User and Entity Behavior Analytics)は、過去のログからユーザーごとの「標準的な行動パターン」を学習します。いつものログイン時間、よく使うデバイス、アクセスするファイルの傾向などをプロファイリングし、そこから逸脱した動きを「スコアリング」します。
例えば、普段は経理システムしか触らない社員が、突然エンジニア向けの共有サーバーにアクセスし、大量のファイルをダウンロードし始めた場合、AIは即座にアラートを上げます。たとえIDとパスワードが正しくても、「その人らしくない動き」を検知できるのが最大の特徴です。現場でよくあるのは、退職間際の社員による顧客情報の持ち出しですが、こうした動きも、アクセス頻度の急増や普段使わないUSBデバイスの接続検知によって未然に防ぐことが可能です。
3. ゼロトラスト環境におけるセキュリティ実装の勘所
「誰も信頼しない(Never Trust, Always Verify)」というゼロトラストの原則において、振る舞い検知は不可欠なコンポーネントです。単に導入するだけでなく、「アイデンティティ(誰が)」「デバイス(何で)」「コンテキスト(どのような状況で)」の3点を統合的に評価する仕組みを構築する必要があります。
実際のご支援では、過検知(誤報)を減らすためのチューニングも重要です。業務プロセスを無視した厳しすぎる制限は、現場の生産性を著しく低下させます。例えば、自社EC構築・成長支援の現場では、セール期間中にアクセスが急増するのは「正常」な動きです。こうしたビジネスの季節性や特異性をAIの学習データに反映させることで、真にリスクの高い行動だけを抽出する運用が可能になります。
よくある質問
- Q. 振る舞い検知AIの導入には、どれくらいの学習期間が必要ですか?
- A. 一般的には2週間から1ヶ月程度のデータ蓄積が必要です。この期間にユーザーの標準的な行動パターンをAIが学習し、ベースライン(定常状態)を構築します。その後の運用を通じて、検知精度はさらに向上していきます。
- Q. 既存のウイルス対策ソフト(EPP/EDR)とは何が違うのでしょうか?
- A. ウイルス対策ソフトは主に「悪意あるプログラム(マルウェア)」を止めるものですが、振る舞い検知(UEBA)は「正当な権限を持つユーザーの異常な動き」を見抜くものです。外部攻撃の最終段階だけでなく、内部不正やアカウント乗っ取り対策に特化しています。
- Q. 小規模な組織でも導入するメリットはありますか?
- A. はい。少人数の組織ほど一人ひとりのアクセス権限が大きくなりがちで、内部不正が発生した際の影響が致命的になるリスクがあります。クラウド型の振る舞い検知サービスであれば、専任のセキュリティ担当者がいなくても、AIによる自動監視機能を活用してリスクを低減できます。
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クラウド時代のセキュリティにおいて、もはや「内側だから安全」という境界型の考え方は通用しません。人力による監視の限界を認め、AIによる振る舞い検知を導入することで、Low and Slow攻撃や内部不正といった「静かなる脅威」を可視化することが可能になります。ゼロトラスト環境の構築は一歩ずつですが、まずはユーザー行動のプロファイリングから始めることが、強固な防衛線を築く第一歩となります。
公開日: 2026年8月28日 / 著者: 安田 修
参考文献
- [1] NIST SP 800-207 "Zero Trust Architecture"
- [2] Gartner "Market Guide for User and Entity Behavior Analytics"

